人気ブログランキング | 話題のタグを見る

延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井

最終日は延吉から近郊の龍井まで半日観光をしてから、上海まで飛行機で戻った。龍井は旧日本統治時代には「間島」と呼ばれていた地域であり、今でも当時の建物が比較的よく残っている町だ。延吉から龍井まで約40分のバス移動では、窓から見る日本とよく似た農村風景を眺めながら、かつて日本であった時代に思いを馳せた。龍井市内では旧間島領事館や日本時代に建てられた大成中学など、昔の雰囲気が残っている場所を主に散策した。昔は独立運動が盛んだったという物々しい感じはまるでなく、全体的にのんびりした雰囲気で、同じく日本に統治されていたことのある台湾の地方都市や韓国の仁川と似たような感じだなと思った。

延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13202203.jpg
延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13213765.jpg
延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13210677.jpg
延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13204440.jpg

龍井の街並みを見学した後、まだ時間があったので、朝鮮の民族詩人「尹東柱」の生家までタクシーで行くことにした。田園風景を抜けて20分ほどでたどり着いたが、何と門が閉まっていた。ただ、よく見ると、張り紙が張っており、用がある人は電話するよう書いてあったので、ダメ元で電話をかけてみることにした。すると、地元の朝鮮族の方が応対してくれたのだが、こちらが韓国人だと思ったのか、中国語で話しても繰り返し朝鮮語で話しかけられるので、日本人ですと伝えると、少し驚いた様子で、すぐ行くから少し待ってくれと言われた。電話をした朝鮮族の方がくると同時に、運よく韓国人の団体客も丁度到着して、一緒にまぎれて中へ入ることができた。当たり前だが、中は完全に朝鮮民族同士の世界になっていたので、入場料を渡してしばらく写真を撮った後、そそくさと記念館を後にした。もし韓国語が出来たら、もう少し楽しむことができたのにな、と少し残念に感じた。しかし、家の裏にある小高い丘に登って、おそらく詩人も見たであろう光景を眺めることが出来て、感慨もひとしおだった。

延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13342508.jpg
延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13340459.jpg
延辺朝鮮族自治州旅行④~龍井_d0128409_13344558.jpg

帰りの飛行機の中では、偶然に上海の家族に会いに行く朝鮮族のおばあさんと隣の席になった。またしても、私のことを韓国人と思ったのか、朝鮮語で話しかけられたので、日本人ですと伝えると、あまり上手とは言えない中国語で応対してくれた。話をしていると、90年代はじめくらいにある日本人がおばあさんの家にやってきて、おばあさんの家に泊めたことがあるらしかった。日本人がどれくらいの年齢だったのか尋ねてみると、当時で60代くらいの方だったらしいので、旧満州育ちの日本人が故郷を再訪問したものだったのだろう。延辺が日本との縁が深い場所であることを、ここでも改めて感じさせられた。

この旅を終えて「朝鮮とは何か」について、少し考えてみた。日本人にとっては「朝鮮語」とは言わずに「韓国語」と呼ぶことが多いように、朝鮮人=韓国人という固定観念があるように思う(私も以前はそうだった)。しかし、実際のところ、韓国以外にも、北朝鮮や中国、ロシア・中央アジアさらには日本など、様々な場所に朝鮮半島ルーツの人が住んでいて、それぞれに歴史や住む環境や考え方も異なっている。日本人は(私も含めて)ニュースなどを見て安易に朝鮮のことを分かった気でつい議論してしまうが、実際は多様性に富んでいて、とても複雑である。最も近い隣人である割には理解が難しい韓国や北朝鮮、中国の朝鮮族や日本の在日それぞれの立場や考え方の違いについて、今後もっと知りたいと思った。


by s326321 | 2017-05-30 13:08 | 中国東北旅行  

<< 延辺朝鮮族自治州旅行③~長白山... >>